できれば外から内(なか)が見えないような事務所をつくりたい、
という設計の相談から始まり「どうしてそんな風にしたいのですか?」
とお話しを聞いてみると「来客があまり多くない職種の事務所なので
外部にオープンな建築ではなく、心地よい作業空間で落ち着いて仕事
ができる環境の方が望ましいと思っている」ただし「外観は閉鎖的で
も内部空間は明るくて作業しやすく機能的な環境にしてほしい」との
こと。また駐車台数はスタッフと来客用で10台は必要というのも絶対
的な設計要件であり、この2つが両立する案を求められた仕事となり
ました。
 
 この条件を落とし込んでスケッチを始めてみると土地の形と面積に
は余裕がないことが判り、パズルを解くようにプランのやり直しが何
度も続きました。そしてようやく出てきた案が駐車場側に向かって建
物をコの字型にして道路から離して建てる案。そうすることで建物に
奥行感が出てきました。さらに敷地後ろにある用水に面してワークス
ペースを配置し窓の形を工夫することで開放感を作り出すアイデアも
生まれました。建物に凹凸が生まれ、その形が作り出す陰影が分かり
にくさとなって周囲からプライバシーを守ることができます。
一方、ワークスペースは前記のように明るく開放感を獲得しているの
で閉ざされた建物の外観からは内部の開放感が想像できず対照的です。

 こんな相反する要素が一体化したオフィスが完成しました。
春になって未だ植えていない中庭の植樹が終われば穏やかな風情のあ
るアプローチになります。それが待ち遠しいです。