夏場の日射遮蔽を適切に行いつつ南面採光が十分に採れる明るい
 LDKのある家、そしてプライバシーが守られた快適な住空間。誰
 もが望むこんな家を街中の隣家が込み入った環境の中で実現する
 のは、実はなかなか難しい。

 今回、そんな敷地環境に建つ中心市街地の家が完成しました。
 しかも開放的にしたい南面側に隣家が近接しているという現実も
 あってプランニングの難易度は高い、そんな敷地環境でした。
 「陽当たりも良くプライバシーも守ることができる広々とした
 LDKつくる」を今回のメインテーマと捉え、アイデアを試行錯誤
 しました。狭く変形したこの敷地になるべく多くの車を停めたい
 というご要望があり、必然的に構造は自由のきく鉄骨造、1階は
 玄関のみとなり、2階はLDK、3階は個室という構成となりました。
 プランを検討していく中で分かったことは「隣地からのプライバ
 シーを守ること」を優先するプランは日当たりが悪くなるという
 ことでした。

 そこで「日当たりも良くてプライバシーも守れるプラン」はない
 だろうかと考え、そして見つけたアイデアがLDKを南面にまっす
 ぐ向き合う構成とする案でした。今回の敷地、南面は建物に対し
 て45°傾いています。つまり南面にまっすぐというプランは45°
 傾けた軸線をプランに導入するというアイデアです。
 そうすると開口部となる壁面も長く取ることができ、リビングに
 つながるデッキテラスは変形ながらも広々とした形となりました。
 周囲からプライバシーも守れ、かつ採光も十分な形。
 二兎を追ったプランの象徴がリビングに接するデッキテラスです。

 道路側や隣家からの建物立面は無表情の鉄板張りの建物となりま
 したが、凹凸のある壁面の裏側には開放感溢れる空間が隠れてい
 るという、言ってみればアンビバレントな建物となったのです。