建主さんと一緒に敷地を見に行って最初にお聞きしたことば、「ここはよく立山連峰が見えるんですよ」「それが気に入ってこの土地、買いました」 遮るものがなく連綿と続く田んぼの向こうにクッキリと見える立山連峰。「へぇ〜、大沢野にもこんな土地があるんだ」と少し感動してこの場所から山々の連なりを見ていました。
「立山連峰を見る家」今回の設計テーマはこれです。 さて、建主さんの要望がそうだからといって、こんな簡単に設計のテーマが決まっていいのだろうか?と思いつつも、それならあえてシンプルにこのテーマ「立山連峰を見る家」を追求してみようと、沸々と力が湧いてきました。

遮るものがない田んぼとその向こうの立山連峰が一体化した家にはどんな空間が必要なんだろう? 敷地前面には交通量の多い幅の広い主要道が走っています。他者の視線も飛び交うこの1階では落ち着いて室内と風景とが一体化することは難しい。それならと、今回は2階にテラスのように全面開放された空間をつくる、できれば床からの開口でありたい、ということでバルコニーも付けることにしました。

では、この外部に全面開放された空間(フリースペース)をどんな用途として使うのか?
幸い、建主さんは友だちも多く、友人を招いてパーティをしたいという希望も聞いていました。 大人数のパーティの会場となる家というのはいくつかのタイプの違うコーナーがあると理想的で す。それならこの2階の全面開放された空間もいくつかのコーナーの一つとして最適な場所となるはず。建物が完成してさっそく開催されたパーティでは2階のこのフリースペースや吹抜のコ ーナー、1階のバーコーナーや少し趣の違う和室、キッチンテーブルコーナーなど様々な仕掛けも好評だったと聞きました。もちろん普段の日常的な生活シーンでも誰かの個室から出て、この開放的なフリースペースで過ごす時間はとても気分が良くて気分転換がはかれます、とも聞きしました。

昔の家が持っていた祝祭を行う「ハレ」の空間(主客を迎える座敷や玄関など)と日常的な「ケ」の空間という当たり前の空間構成が無くなってしまった現代の家。今回の家は形は違えどもパー ティをする「ハレ」の空間と日常的な生活空間としての「ケ」の空間がいわば一体化して包含している家です。その意味では昔の家のように「ハレ」と「ケ」の空間を持ちながらも、その形は現代的なものとなっているのです。